電脳>2ちゃんねるはなぜ潰れないのか?

本は、図書館で借りる主義なので、新刊はほとんど読んでいない。しかし、たまたまこの本を借りることができたので、珍しく最近の本の紹介ができました。いろいろ言いたいことはあるけれど、インターネットの裏事情を知りたい人にはすごくいい本だと思います。グーグルもWeb2.0もばっさり斬られてます。

2ちゃんねるはなぜ潰れないのか? (扶桑社新書 14)
西村 博之
扶桑社
2007-06-29
定価 ¥ 777
おすすめ平均:
2ちゃんねるはあまりみないですが
さらっと読める。
知りたいのは・・・

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ひろゆきというのは、やはり頭いいですね。私はかなり好きなタイプの人間です。Web系の構築者は、perlプログラマーが多い。彼もそのひとり。成功している大規模サイトは、perlが多いんでしょう。このperlプログラマーの特徴は、


意外に理系じゃなくて文系の人もいるということですね。自分で企画して、自分でサイトをプログラミングする。だから、ニーズにあった応答の良いシステムを安定して運用できる。例えば、2ちゃんねるやニコニコ動画のように。この本を読んだ後、[ニコニコ動画](http://www.nicovideo.jp/)を使ってみたが、なかなか面白い。テロップで視聴者のコメントが見えるのはなかなかのアイディア。応答性もなかなかいい。これならば、YouTubeに対抗できるでしょう。

さて、この本の目玉は、「なぜ潰れないか」「なぜ逮捕されないか」「なぜ賠償金を支払わないか」というところでしょう。2ちゃんねるのサーバーはUSAにあるから、まず設置場所の法律が適用される。ただし、責任者が日本在住の人間だから、名誉毀損などの民事訴訟が起こされる。「ひろゆき」がUSAに移住してしまうか、アメリカ人が責任者になったらどうなんだろう。面白いのは、民事裁判で被告になった場合は、被告の居住地での裁判となるのだが、不法行為が行われた場所の管轄の裁判所で行うことができると書いてあります。この本の中で、日本の違う場所で同じ日に裁判を起こされて、東京に移してくれといったが却下されたという「ひろゆき」の説明があります。結局同時に裁判が行われ、被告は出席せず、敗訴になったということです。これは、笑えます。2ちゃんねるの不法行為が全国各地で発生しているからでしょう。サーバーはUSAにあっても、名誉毀損などは、各地で起こっているという判断なんでしょうが、面白いですね。

彼が逮捕されない理由は、もし刑事事件になったとしても、サーバーの所在地がUSAだから、日本の法律の範囲外だからです。この本の中でYahoo JapanもUSAにサーバーは置いてあるのは、日本の法律では送信可能可権というようなものがあるからだと書いてあります。

彼が賠償金を支払わない理由は、死刑にならないからと答えているそうです。民事の賠償金というのは、もし払わなくても刑事事件にならないからだとも言っています。私も法律のことはわからないですが、民事で負けて賠償金を支払うことになっても、本人がお金を持っていなければ取れないし、持っている場合には差し押さえなどの強制執行ができるようですが、生活費まで取り上げることは政令で禁止されているようです。当然時効があるので、そこまで持っていくのが「ひろゆき」の作戦かもしれません。しかも彼の頭のいいところは、弁護士を雇わないということです。弁護士費用が馬鹿にならないし、その費用の請求の方が賠償金より取立てが厳しいかもしれません。

こうして見てくると、彼の頭の良さは際立っています。2ちゃんねるの広告による収入が月額1000万円、サーバー費用300万程度とすると、少なくとも年収は1億くらいはあるでしょう。彼は支払う能力がありますが、おそらく支払うつもりはありません。法律を馬鹿にしていると思う人もいるでしょう。しかし、私はこの件に関しては、違う意見を持っています。法律というのは、新しい事象に対応するのに時間がかかる。法律が成立するまでに、状況はどんどん変わっている。結局その法律ができたころには、その法律にひっかからないような対処を考え出し、まったく別の問題が起こっているということになるでしょう。簡単に言えば、このインターネット時代に起こることは、法律では規制できない。もう少し、落ち着くところまでいく間は、議論がつくされるまで待ったほうがいいと考えています。匿名の掲示板に対して、名誉毀損や損害賠償するようなことは、掲示板の管理者の問題ではなく、投稿した人間の問題です。チラシやその辺の電信柱に印刷して貼ったとしても、同じことが起こります。すべてを取り去るまでには、既に広まってしまいます。それを管理者の責任にするのはおかしいし、その場所を作ったのが悪いというのは行き過ぎた判断でしょう。

とにかく彼のすごいところは、全責任を引き受け、この社会のルールの中でどこまで自分に規制がかかるかを意識して行動している、発言していることでしょう。「遊んで暮らす」「明日できることは今日やらない」などいろいろ言ってますが、私が考えていることに非常に近い。彼は、この5年後くらいを頭の中に描いて、どのように大衆の意識が動いていくか、直感のようなものを持っています。

2007年08月26日 | Posted in 電脳 | | No Comments » 

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