Topics>弱者の経済学と木村のりんご

これも経済学だ!
中島 隆信
筑摩書房
2006-08
定価 ¥ 756
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文化や伝統、宗教のいろんな「なぜ?」を経済学で解剖すると・・・
身近なものが経済学
行動には必ず理由がある
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NHKの番組「ザ・プロフェッショナル」で、農業が取り上げられた。自然農法でりんごを作る木村さん。農業はあまり興味ないなと思いながら、見始めたら吸い込まれてしまった。そして、弱者の経済学と木村のりんごにある共通点に気がついた。


木村のりんごは、まさに複雑系だ。木村は、制御するのは難しい複雑系を維持するノウハウを身に着けている。その生態系で生まれてくるりんごは、生命力に満ちている。腐らないで乾燥していくりんご。育てるのではなく、手助けする。生命力をつけるということは、様々な試練をへて達成される。過保護に、農薬で、肥料で守られたりんごには、生命力はない。それは放っておけば、腐ってしまうりんごだ。農薬も肥料も与えなければ、虫がつき、病気になる。しかし、自然な環境にすれば、柔らかな土や様々な虫が戻ってきて、その中でバランスが保たれる。木村さんは、それを見守っているだけだ。

中島隆信の「これも経済学だ!」の中で、こう述べている。

経済学者の多くは弱者保護には反対の立場をとっている。その理由として、弱者は保護されると努力を怠るようになり、ますます弱くなるからだとする。

社会は、自然と同じように複雑系だ。1人1人をりんごとすれば、農薬と肥料で守られた人間はすぐに腐ってしまうりんごだ。強制的に援助して育ててやる必要はなく、人間の個々の力で育っていかなければ、生命力に満ちることはない。法的手段によって、弱者を守る。これは資本主義の中で負け組を保護する是正的な手段でしかない。
この話に結論はない。
人間はりんごではないからだ。生命力に満ちたりんごを作る過程で、虫がついたりんごや病気になったりんごは、捨てられるだけだ。しかし、人間は。。。

白金台のフレンチ・レストラン「シェ・イグチ」で、「木村さんのりんごのスープ」を飲みたいところだが、予約しても1年後になるそうだ。

2006年12月10日 | Posted in Topics | | No Comments » 

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