百冊029:The Coming Wave
ムスタファ・スレイマン マイケル・バスカー著
「The Coming Wave」2023年

ムスタファ・スレイマン?
ムスタファ・スレイマンという名前を、本書を読むまで全く知らなかった。DeepMind社の創業者の一人というだけで、どういう人物なのかまったくわからない。
しかし、この本を読んで認識が大きく変わった。
DeepMind社の中で、デミス・ハサビスが技術開発の中心とすれば、ムスタファ・スレイマンは、総合プロヂューサーの役目を担っていたのではないかと感じた。
ディープラーニングによるAI革命について、非常に幅広い情報を収集し、様々な観点から問題を抽出し、解決策を検討している。本書は、その2023年時点での集大成と言って良い内容になっている。
ムスタファ・スレイマンは、現在MicrosoftのコンシューマーAI部門であるMicrosoft AIのエグゼクティブ
バイスプレジデント(EVP)兼CEOとなっている。DeepMind社やGoogleを離れた理由がよくわからないが、これからもAI分野における影響力を持ち続ける気がする。
アトム、ビット、ゲノム
ムスタファ・スレイマンがコンセプトとして打ち出している「アトム、ビット、ゲノムの統合」。
- アトム (物質)ロボット工学・ナノテクノロジー
- ビット (情報)生成AI
- ゲノム (生命)ゲノム編集、合成生物学
ムスタファ・スレイマンは、これらが相互に影響して、進化して、融合した結果は予測できないと言っている。
2023年の時点で、AGI (Artificial General Intelligence)がいつ実現するか、AIは意志を持つか、など議論しても意味がない。今すべきことは、ACI (Artificial Capable Intelligence)を実現させて、社会を変革することで、その後にAGIや意志などを議論しなければ、多くの無駄な議論を生むだけだと言っている。
この本の読み方

- ここから読んでほしい
「第Ⅱ部 来たるべき波」から読むことをおすすめする。
理由は、面白いから。読み始めたら止まらない内容です。
DeepMind社が最初に手掛けたブレイクアウト。何も教えず、成功したら報酬を与えるだけで、攻略法を発見し、それを最適化する。ディープラーニングの威力を感じるところから、一気に「第8章 止められないインセンティブ」まで、ディープラーニングの成長する現場を見てきた話は、興奮しかない。 - ここが一番本書の肝かもしれない
「第Ⅲ部 弱体化する国家」
この生成AI革命によって、犯罪が増えるのか、減るのか、共産主義が強化されるのか、民主主義が加速するのか、一極集中の都市国家なのか、地方分散なのか。
どちらか一方になるのではなく、世界中が様々な形態に分化していくのか、想像がつかない、と著者は言う。はっきりいって、私も大きな混乱がおこり、その結末がどうなるか予測がつかない。 - 「第Ⅳ部」と「第Ⅰ部」
「第Ⅱ部」「第Ⅲ部」を読んだ後の方が、理解しやすい気がする。
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