百冊020:スティーブ・ジョブズの流儀

コンピュータビジネスに関するお勧めの百冊に、久しぶりに入れたい本に出会いました。

リーアンダー ケイニー
ランダムハウス講談社
おすすめ平均:
心が奮える一冊
回顧録ではなくビジネス書ですし
あなたの役には立たない・・・が、面白すぎる!

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この本は各章の終わりに「スティーブに学ぶ教訓」という一節がついている。体裁はビジネス本である。私はビジネス本というものは、一つの成功体験であり、読んで面白いとは思うものの、教訓として何か役に立つことがあると思ったことがない。ある人の成功体験とは、偶然その人がそこにいたから成立したもので、そこから教訓のようなものを引き出してもすぐに陳腐化してしまうと思っている。結局自分がスキルをつけて、チャンスをものにできる場所に頻繁にでかけ、幸運の波が来たときにそれを捕まえて、いつまで波乗りできるかだ、と思っている。
この本は、スティーブがアップルに戻ってきて、如何に成功したかのビジネス本として読める。それだけでもけっこう面白い。しかし、この本の本質は、彼の思考回路をうまくあぶりだしていることだろう。わかっても誰もマネできない。それが実際のところだろう。

非常に面白いことがいろいろ書いてある本だが、私がポイントとしてあげたいのは2つである。

①シンプルさの追求
デザインをする際に、常にシンプルさを求める。これは本当に重要だ。設計者でシンプルさを追求しないものは、レベルが低い。生活も同じで、シンプルさを追及すると、本質だけが見えてくる。物も必要なものだけを所有する。ジョブズの家には、家具はほとんどなく、アインシュタインの写真とティファニーの電灯、いすとベッドだけであるとか、どんな道具を買うかと聞かれて、「結局買わないものが多い。どれもくだらないから。」と答えているエピソードが面白い。

②垂直統合
マイクロソフトが成功したのは、分業制の中でOSだけに集中したからだといわれている。APIを公開することで、様々なメーカーやアプリケーション開発者を参入させて、市場規模を拡大した。ところがアップルは、ハードもOSも自社でクローズにしたため、シェアを拡大することがきなかった。しかし、iPodの時代になって、アップルは携帯プレーヤーの市場を独占し、マイクロソフトは参入することもできていない。この差は、ハード、ソフト、サービスを一社で提供できるアップルだからできた。これはアップルが垂直統合の会社だからということを理由にしている。コシューマー向けの製品は、基本的に家電の会社と同じ市場になるわけで、ソニーがでてきてもおかしくないが、成功していない。それは、ソニーでは、ハード、ソフト、サービスの3つを結びつける経営者がいないからだろう。私も以前から思っているのだが、ハード、ソフト、サービスの三者を緊密に結びつけることにより、最強のビジネスモデルができると思っている。だから、iTunes、 iPod、オンラインストアを結びつけたビジネスの作り方を見たとき、個々にはできるプレーヤーはいるけれど、三者を一つにして提供できる会社は、数少ないだろうと思った。

来年1月のマックワールドでジョブズの基調講演がないということから考えて、健康状態が悪いのではないかという予測が流れているが、この本を読む限り、ジョブズのいないアップルというのはかなり心配である。

2008年12月31日 | Posted in 電脳:百冊 | | No Comments » 

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