本:フリーエージェント社会の到来

フリーエージェント社会の到来―「雇われない生き方」は何を変えるか
玄田 有史
ダイヤモンド社
2002-04
定価 ¥ 2,310
おすすめ平均:
本当にこんな世界が来るかも知れません
もっと力強く生きよう
これからの生き方を考えさせられる
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2001年に書かれ、日本で2002年に翻訳出版された本で、既に4年が経過しています。著者のダニエル・ピンクは、最近大前研一訳の「ハイコンセプト」が出版されて興味を持っていたのですが、こんな本を書いていたんですね。日本でもフリーエージェントは増えているのでしょうが、まだ表層にでるほど全体に占める割合は多くないのでしょう。


そもそもこういう本を未来の予測本として読むものなのでしょうか。何か違いますね。自分で新しいものを生み出す力を持っている人間は、常に自分たちが最大の利益が得られるように、新しい仕組みを考えている。フリーエージェントもその一つに過ぎないと思います。常に時代の変わり方を予測できる人間は、その中でいかに楽をして他の人より金を稼げるか、あるいは自分が楽しめる仕事を見つけ出すか、つまり自分にとって最も都合のいいことを実現できる、先行者利益を追求することができるのです。後から入ってくる人間は、そのおこぼれしか得ることはできません。
だから、家内工業的な時代には、企業を目指し、その次は医者や弁護士などの専門職を目指し、それも人数が増えて一般化すると、次はフリーエージェントを目指すのでしょう。企業も専門職も人数が少ない場合には、いろいろ旨みがあるのですが、人数が増えて質が低下してくると、それほどいいビジネスではなくなります。
もちろん、フリーエージェント社会は、インターネットの普及が大きな役割を果たしていて、企業に所属しなくても仕事ができる人がどんどん増えるのは望ましいのですが、間違っていけないのは、個人でお金を稼げる何か能力があるかどうかが問題なのであって、結局一部の人間しかフリーエージェントにはなれないのです。

従って、この著者が主張するようなフリーエージェント社会が到来するというより、一部の頭のいい連中は、既に企業社会に見切りをつけて、逃げ出し始めたという現象を、いっているだけだと思うのです。

最近出版された「ハイコンセプト」の副題が「新しいことを考え出す人の時代」なんて書いてあるのですが、当たり前じゃないと思いませんか。繰り返しになりますが、新しいことを考える人間というのは、自分に都合の良い新しいルールを作って、最初に実行していくわけですから、どんな時代がきても、常に最高の利益が得られるんです。そう考えると、こういうビジネス書というようなものが、次々に書かれて売れているとすると馬鹿げた話です。こんなものを買って読むくらいだったら、自分の頭で考えた方がよっぽど意味があります。

ハイ・コンセプト「新しいこと」を考え出す人の時代 ハイ・コンセプト「新しいこと」を考え出す人の時代
ダニエル・ピンク 大前 研一

三笠書房 2006-05-08
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私が「フリーエージェント社会の到来」を読んで面白いと思ったのは一点、スターバックスやキンコーズのビジネスの話です。フリ-エージェントが最初に困るのは、自分の仕事環境と打ち合わせやコミュニケーションの場所である。もちろん自宅を仕事で使うという人も多くいるが、静かさや集中できる場所を外に求める人もいるだろう。さらに、打ち合わせ場所である。東京のような場所では、こういうフリーエージェントが集い、さらに篭る場所があってもいい。実際六本木ヒルズの中のアカデミーヒルズは、そのものである。篭る場所としては、既に定着していると思うが、コミュニケーションの場としては、まだまだ機能していない。こういうところで、新しいプロジェクトが生まれてくるようなことがあれば、本当に面白いと思うが、現実にそれが機能するような仕掛けは難しいのだろう。

2006年07月30日 | Posted in | | No Comments » 

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